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出来上がった物をせっせと広間へ運ん

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出来上がった物をせっせと広間へ運ん

出来上がった物をせっせと広間へ運んで膳を並べ終える頃にぱらぱらと藩士達が集まってくる。

 

 

「三津さんお顔の調子はどうですか。」

 

 

「おわ!?びっくりした!杉山さんか。おはようございます。」

 

 

背後からいきなり声をかけられ不細工な悲鳴を上げてしまった。

 

 

「松助です。」 肉毒桿菌素

 

 

「あ,はい。松助さん。顔の調子はいつも通りです。」

 

 

やはり呼び方を訂正された。それと顔の調子は可もなく不可もなくだ。多分絶好調と言える日は年に数回訪れるかどうか。

絶好調と言っても別にとびきり美人になる訳でも可愛くなる訳でもない。浮腫もなく目がいつもよりちょっと大きいと思える時が絶好調だ。

 

 

「良かったです。もし不調ならアイツら始末しようと思ってたんですが無駄な血を流さず済みそうです。」

 

 

「そっそれは良かったです……。返り血浴びた着物洗わずに済みます……。」

 

 

『危なかった……。元が良くないからそんなに良くないって言おうと思ったけど止めて良かった……。』

 

 

冗談でも言って笑ってもらおうかなんて思ったのを後悔した。ここでは余計な事が命取りになりそうだ。気が抜けないと表情をきゅっと引き締めた。

 

 

「そうだな。三津さんの仕事を増やすことはしたくないから無闇に斬るのはやめておく。」

 

 

是非ともそうしていただきたい。三津は全力で首を縦に振った。

 

 

「特に……畳を汚されるのが一番困るので伝えておきますね。」

 

 

サヤの一言に今度は杉山が全力で首を縦に振った。どちらかと言うと仏頂面で強面な杉山をも黙らせて頷かせてしまうサヤの謎が更に深まる。

朝一から物騒な話に巻き込まれてしまった。三津は全力で仕事に取り組んで忘れ去ろうとした。

 

 

「三津さんあれで一日保つの?体力。」

 

 

「一応壬生でしごかれてたみたいだけど。」

 

 

「向こうでもあんなにお御足出してたんですかねぇ。」

 

 

入江,吉田,久坂は物陰からこっそり三津の働きっぷりを見ていた。今三津は裾を捲りあげて廊下を雑巾がけしている。

 

 

「ありゃ出してたね。桂さんに怒られるのも時間のも……あー……。」

 

 

時間の問題だと思った矢先,部屋から出てきた桂と三津は対面してしまった。

 

 

「うわぁ。桂さんが眉間押さえて天を仰いだー。怒ってるね怒ってるよねー。」

 

 

「九一面白がるんじゃないよ。」

 

 

にやにやしながら桂の動きを口にして次は?次は?と展開を楽しむ入江の頭を久坂が小突いた。三人の視線の先の三津はと言うと,あろう事か廊下で正座をさせられている。

 

 

「あーあ。あんな所で説教なんていい見世物じゃないか。」

 

 

吉田が流石に可哀想だからと助けに行こうとしたが,いいところにサヤと乃美がやって来て三津と桂の間に割って入ってくれた。

 

 

「天女と翁が助けに来たからひとまず大丈夫だな。」

 

 

今度は桂が乃美に睨まれているのが面白くて入江は喉を鳴らして笑った。

三津は何度かぺこぺこ頭を下げた後,サヤについてその場を立ち去った。そして三津が居なくなった後,今度は桂が乃美に対して何度も頭を下げていた。

 

 

 

 

 

「サヤさん助かりました……。」

 

 

「いいえ。丁度乃美様から仕事を頼まれたとこだったので。」

 

 

新しく仕立てた乃美の羽織を受け取りに行く役目を給わった。

サヤは一緒に出かける為に三津を探していたら廊下で説教されてるのを見つけた。

 

 

「掃除してて怒られるとは思いませんでした……。」

 

 

「脚さえ出してなければ良かったんですけどねぇ。ほら何処で誰が見てるか分からへんし。」

 

 

一応男の巣窟だからねと注意を受けた。確かに壬生でも痛い目を見たから流石に言うことは聞かねばと反省する。

 

 

「以後気をつけます……。」

 

 

サヤが邪気を含まずにっこりと笑ってくれたのでほっと胸をなで下ろした。

 

 

「それにしても乃美様から随分とお駄賃いただいてもたわぁ。」

 

 

サヤは袂から巾着を取り出してどうする?と小首を傾げた。

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